北海道新幹線の札幌駅延伸工事を行っている鉄道・運輸機構(JRTT)は2023年10月20日(金)、新小樽駅(仮称)と長万部駅のデザイン素案を所在地の小樽市、長万部町にそれぞれ提示しました。
小樽の新たな玄関は「天狗山」の麓
JRTTは、駅舎に求めるデザインの要望書をそれぞれの自治体から受け取っており、1年あまりかけてデザインの検討を進めてきました。10月17日(火)には新八雲駅(仮称)と倶知安駅のデザイン提案書を八雲町、倶知安町に手渡しており、今回は第2弾となります。
小樽の新たな玄関口となる新小樽駅は、函館本線小樽駅から南へ約4km、前後をトンネルに挟まれた天狗山の麓に建設されます。検討部会を設けて市がまとめたデザインコンセプトは「浪漫が薫る 温もりと心地よさを感じる駅〜まちの記憶を未来へ〜」です。北日本一の商都として栄えた「小樽らしさ」を駅舎に映し出し、後世へと受け継いでいきたいという市民の願いを込めたと説明しています。
これに沿ってJRTTが制作したデザイン案は3つです。歴史的な建物に多用されてた素材を用いて品格を重視した「歴史の継承」、海運で栄えた小樽の帆船を未来感のあるガラススクリーンで表現した「新旧の融合」、水すだれをイメージしたランダムなガラス窓で周辺の自然環境に溶け込む「自然と温もり」と、どれも個性的です。市はアンケートによる市民投票などを経て推薦案を決める予定です。
(北海道新幹線新小樽駅、長万部駅のデザインコンセプト、JRTTが提示した駅舎の素案など詳細は下の図表を参照)
長万部駅ホームから噴火湾の眺め◎
長万部町は、地元の産業界に加え、長万部高校の生徒7名にも参加してもらってデザイン検討委員会を開き、さまざまな視点からの意見を集約しました。古くから鉄道の要衝として知られる町は、羊蹄山や駒ケ岳を背景に内浦湾を一望でき、市街地には温泉もあります。そんな特徴を「湯けむり香る噴火湾、人と時代の交差点」とまとめ、今後も交通拠点となる新幹線駅への期待を寄せます。
JRTTが示したデザイン3案に共通するのは、ガラス中心の設計で、ホームから雄大な内浦湾を展望できる点です。その上で外壁デザインには、交通拠点をイメージした奥行き感のある「交差」、湯けむりや波の揺らめきを表す上下に動きのある縦線、きらめく雪や海の光をモチーフにした角度の異なるパネルと、3つのテーマが落とし込まれています。町は2024年春頃までに推薦案を決める予定です。
北海道新幹線の新函館北斗駅〜札幌駅間、全長212kmを整備する計画は2012年(平成24年)に工事認可を受け、2035年度の完成を予定して着工されました。その後の政府・与党申合せにより、5年前倒しの2030年度末開業を目指すことが示されましたが、2023年10月現在でも事業用地のうち6%が取得できておらず、トンネル掘削も約3割の区間が未完成と、工事の遅れを指摘する声が多い状況です。
札幌市が2030年冬季五輪の招致活動を断念したことを受け、新幹線の開業時期を延期するよう政府が関係各所との調整に入る見通しであると北海道新聞は報じています。